遺言ノート

遺言とは

遺言とは、自分が亡くなたっときに、自分の財産を誰かに渡したり、遺産分割の方法を決めたり、子の認知をしたりするために、あらかじめその内容を文書に書いておくことです。とくに遺言で財産を渡すことを「遺贈(いぞう)」と言います。

色んな方式の遺言

ひとえに遺言といっても、いろんな書き方、方法があります。代表的なものは「自筆遺言」や「公正証書遺言」です。その他に「秘密遺言」や「危急時遺言」などがあります。 

  • 自筆遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密遺言
  • 危急時遺言

遺言でよく使われるのは「自筆遺言」と「公正証書遺言」です。ここではその二つに絞って見ていきましょう。

財産をあげるだけが遺言ではありません

 遺言の機能として、財産を渡す「遺贈」がありますが、その他にも遺言には機能があります。

 ① 認知

 ② 未成年後見人・未成年後見監督人の指定

 ③ 推定相続人の廃除・廃除の取消し

 ④ 相続分の指定・第三者への委託

 ⑤ 担保責任の定め

 ⑥ 遺言執行者の指定

 ⑦ 遺留分減殺の割合の別段の定め

条件をつけることもできます

遺言で、財産を渡すときに条件をつけることができます。例えば、長男に対し「1000万円を相続させる代わりに、毎週実家に帰り妻の生活の面倒をみること」などの遺贈です。このように、単純に財産を渡すだけでなく、何か負担させることを「負担付遺贈」といいます。

遺言には、附言も効果的です

遺言で必要なことだけを端的に書くのもよいですが、遺された人へ気持ちを伝えることも大切なことです。「附言」とは、そういった法律の効果があるものではないことについて、本編である遺言に付して書き残しておくものです。これは法律とは関係あることではありませんが、遺された人がその遺言を受け入れやすい効果もあります。

是非、自分の言葉で書き残しておくことをお勧めします。

自筆遺言のメリット・デメリット

メリット

  • ペンと紙・印鑑・朱肉があればいつでもすぐにでも書くことができる。
  • 費用がかからない。
  • 誰にも内緒で書き残しておくことができる。
  • 何回でも遺言を書き残しておくことができる。(訂正・変更がすぐできる)

デメリット

  • 法律によって書き方が決まっており、それに従って書かないと無効になってしまう。
  • 書き方が難しい。
  • 自筆以外は許されていないので、長文にするには困難。(※一部法改正あり)
  • 書いた遺言を失くしやすい。保管が難しい。
  • 何度でも書き直せるため、矛盾が生じやすい。
  • いざ遺言書に基づいて相続手続きに困難が生じるときがある。
  • 遺言書の開封には家庭裁判所の検認手続きが必要になる。(※法改正あり)

まとめ

自筆遺言は書き方のポイントさえ押さえておけば、いつでもすぐに書けるところに最大のメリットがあります。費用もかからないので自分が思ったときに書くとよいでしょう。保管が難しく、銀行や役所などでは自筆遺言は慎重に扱う必要があるため、手続きが遅くなったり、手続きができないこともしばしばあります。

簡単な内容であれば、自筆遺言でよいでしょうし、一度公正証書遺言を作成しておいて、少しの修正・変更を自筆遺言で書き残しておくなどの使い分けなどもよいでしょう。

 

法改正について 利用しやすくなった自筆遺言

すべての文章は自筆である必要はなくなりました。

平成31年1月13日より、自筆遺言が利用しやすくなりました。

今までは、自筆遺言はすべての文章を自筆で書かなくてはなりませんでした。今回の改正は、遺言の本文は自筆で書かなくてはならないのは従来通りですが、財産の表記「財産目録」の箇所はパソコンで作成したものをプリントアウトしたものでもよくなりました。

そのため、自筆の負担は少し軽減できるようになりました。

 

 

 

自筆遺言は、法務局で保管できるように (遺言書保管法)

自筆遺言は法務局で保管できるようになります。これは未だどのような手続きをしなければいけないのか決まっていませんが、法務局でも遺言の形式的なチェックがなされるので、少なくとも明らかな無効になる遺言は未然に防げるようになるでしょう。また、家庭裁判所の検認手続きは不要になるのも大きなメリットともいえます。平成32年7月13日からスタートです。

公正証書遺言のメリット・デメリット

メリット

  • 遺言を自分で書かなくてもよい。公証役場や専門家が作成します。
  • 公証人や専門家などのアドバイスによって複雑な内容の遺言が作成できる。
  • 公証人が確認することになるので、遺言が無効になることはない。
  • 作成した遺言は公証役場で保管される。
  • 相続開始時には、遺言の家庭裁判所の検認手続きは不要。
  • 公正証書の遺言であれば、相続手続きもスムーズにできます。

デメリット

  • 費用がかかる。(公証役場での手数料・専門家の手数料)
  • 公証役場で手続きすることになるため、簡単には遺言を作成できない。

まとめ

公正証書遺言は、その後の相続手続きもやりやすく、複雑な内容であったとしてもしっかりした遺言を作成することができます。確実に遺言とおりに相続するには公正証書遺言をつくることをお勧めします。

一度作ってしまった公正証書遺言を変更するには、自筆遺言で変更することもできます。大幅な内容変更であれば公証役場で再度やり直すほうがよいでしょう。

 

自筆遺言の書き方

用意するもの

自筆遺言に必要なものは、紙とペンと朱肉と印鑑です。

鉛筆や消すことのできるボールペンなどは遺言では利用できません。印鑑は実印でなくてもよいです。認め印でもよいですがいわゆる三文判(100円均一ショップであるような印鑑など)は避けた方がよいでしょう。

 

遺言に必ず必要なこと

  • 遺言者本人の直筆であること(※法改正あり)
  • 遺言を作成した日付を記入すること
  • 本人の住所と氏名の署名と印鑑の捺印をすること
  • 訂正ある場合は、訂正箇所に署名の捺印と同様の印鑑を押すこと

以上を踏まえないとその遺言は無効になります。

まずは、遺言者本人の直筆であることです。しかし、財産目録に関する箇所は直筆でなくてもよくなりました。(但し、財産目録の各ページに遺言者本人の署名と捺印が必要です)

日付は日にちまで正確に記入します。○「令和元年5月1日」、×「令和元年5月吉日」

遺言書の最後に、遺言者本人の署名と捺印をします。印鑑は実印でなくてもよいですが、今後遺言を数回書くこともありますので、しっかりした遺言書を作成したい場合は実印がよいでしょう。

 

遺言のポイント

  • 財産をあげる場合は、語尾に「相続させる」と文言を記載します。
  • 財産の全部をあげる場合や割合であげる場合は、「財産の全部」「財産の2分の1」「折半して相続」など記載します。
  • 特定の財産をあげる場合は、必ずその財産を特定できるようにしておきます。
  • 遺言書を作成した場合は、封筒に封印し信頼できる人に預けたり、金庫など相続が起きた場合に必ず相続人が発見できる場所に保管します。

遺言の見本

<遺 言>

私の全ての財産を、私の長男の太郎に相続させる。

令和元年5月1日

○○県○○市○○町1-1 法務一郎 印

<遺 言>

私の所有する以下不動産を、私の長女の花子に相続させる。

一、○○県○○市○○町1番1 の土地

一、○○県○○市○○町1番地1 家屋番号 1番1の建物

私は、上記以外の財産の全てを、私の長男の太郎に相続させる。

 

令和元年5月1日

○○県○○市○○町1-1 法務一郎 印

<遺 言>

私の所有する後記財産目録記載の符号(い)欄の財産を、私の長女の花子に相続させる。

 

私の所有する後記財産目録記載の符号(ろ)欄の財産を、私の長男の太郎に相続させる。

 

令和元年5月1日

○○県○○市○○町1-1 法務一郎 印

<財産目録>

符号(い)の財産

預貯金 ○○信用金庫 ○○支店 普通預金 口座番号12345号

土地 所在地 ○○県○○市○○町  

地番 1番1 

地目 宅地  

地積 200.00㎡

建物 所在地 ○○県○○市○○町1番地1  

地番 1番1 

種類 居宅  

構造 木造平家建 

床面積100.00㎡

 

符号(ろ)の財産

預貯金 ○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号67890号

預貯金 ○○銀行 ○○支店 定期預金 口座番号76543号

有価証券等 ○○証券会社 口座番号23456号 に関するすべての株式

 

令和元年5月1日

 

○○県○○市○○町1-1 法務一郎 印

 

 

負担付遺贈の書き方

負担付遺贈というのは、財産をあげる代わりに、財産をもらう人(受遺者といいます)が遺言で指定された行為をしなければならないことをいいます。ただし、その行為をしなかったとしても受遺者は財産の取得ができないわけではありません。

 

遺言の見本

<遺 言>

私の所有する○○銀行○○支店普通預金口座番号○○○○を、私の長女の花子に相続させる。

私は上記を除く全ての財産を、私の長男の太郎に相続させる代わりに、太郎は私の妻の暮らしや先祖の墓の一切の面倒をみること。

 

令和元年5月1日

○○県○○市○○町1-1 法務一郎 印

附言の書き方

附言には遺言に添える文章のことをいいます。法律的な効果、権利の付与や義務の負担を負わせるものではありません。あくまでも遺言者が、相続人に対して想いを伝えるために書いたりします。

遺言の見本

<遺 言>

私の所有する○○銀行○○支店 定期預金口座番号○○○○を、私の長女の花子に相続させる。

私は上記を除く全ての財産を、私の長男の太郎に相続させる代わりに、太郎は私の妻の暮らしや先祖の墓の一切の面倒をみること。

 

<附言>

太郎には家督を継いでもらいたいので自宅などを相続させます。そしてこの相続財産で妻の暮らしの面倒をみてほしい。

花子には、預貯金を孫の四郎君のために学費に利用してください。今までありがとう。

 

令和元年5月1日

○○県○○市○○町1-1 法務一郎 印